※投稿の検索は、右上のを、ラベル・リンク集・アーカイブは左上のをクリック
ホーム |  弊所

インド特許法の不特許事由


インドは、BRICSの一角をなす、重要な新興国であることは間違いありません。そして、インドは、後発品を製造販売する医薬品メーカーが多く存在することも知られています。そのような状況を反映して、医薬・バイオに関する特許制度の在り様に関しては、極めて強い特殊性があります。例えば、不特許事由や裁定実施権が有名です。

特許庁のHPにあるインド特許法(2005 4 4日法律第 15号改正)に記載のインド特許法上の不特許事由(章 特許されない発明)は次のとおりです。もちろん、強調は私に拠るものです。


章 特許されない発明
3条 発明でないもの
次に掲げるものは,本法の趣旨に該当する発明とはしない。
(a) 取るに足らない発明,又は確立された自然法則に明らかに反する事項をクレームする発明
(b) その主たる用途若しくはその意図された用途又は商業的実施が,公序良俗に反し,又は人,動物,植物の生命若しくは健康,又は環境に深刻な害悪を引き起こす発明
(c) 科学的原理の単なる発見,又は抽象的理論の形成,又は現存する生物若しくは非生物物質の発見
(d) 既知の物質について何らかの新規な形態の単なる発見であって当該物質の既知の効能の増大にならないもの,又は既知の物質の新規特性若しくは新規用途の単なる発見,既知の方法,機械,若しくは装置の単なる用途の単なる発見。ただし,かかる既知の方法が新規な製品を作り出すことになるか,又は少なくとも 1 の新規な反応物を使用する場合は,この限りでない。
説明--本号の適用上,既知物質の塩,エステル,エーテル,多形体,代謝物質,純形態,粒径,異性体,異性体混合物,錯体,配合物,及び他の誘導体は,それらが効能に関する特性上実質的に異ならない限り,同一物質とみなす。
(e) 物質の成分の諸性質についての集合という結果となるに過ぎない混合によって得られる物質,又は当該物質を製造する方法
(f) 既知の装置の単なる配置若しくは再配置又は複製であり,これを構成する各装置が既知の方法によって相互に独立して機能するもの
(g)[削除]
(h) 農業又は園芸についての方法
(i) 人の内科的,外科的,治療的,予防的,診断的,療法的若しくはその他の処置方法,又は動物の類似の処置方法であって,それら動物を疾病から自由にし又はそれらの経済的価値若しくはそれらの製品の経済的価値を増進させるもの
(j) 微生物以外の植物及び動物の全部又はそれらの一部。これには,種子,変種及び種,並びに植物及び動物の生産及び繁殖のための本質的に生物学的方法を含む。
(k) 数学的若しくは営業の方法,又はコンピュータ・プログラムそれ自体若しくはアルゴリズム
(l) 文学,演劇,音楽若しくは芸術作品,又は他の何らかの審美的創作物。これには,映画作品及びテレビ制作品を含む。
(m) 精神的行為をなすための単なる計画若しくは規則若しくは方法,又はゲームをするための方法
(n) 情報の提示
(o) 集積回路の回路配置
(p) 事実上,古来の知識である発明,又は古来知られた 1 若しくは 2 以上の部品の既知の特性の集合若しくは複製である発明
4条 原子力に関する発明は特許されない
1962年原子力法(1962年法律第33)20(1)に該当する原子力に関する発明については,特許を一切付与しない。
5条 製造方法又は工程に限り特許される発明[削除]


ざっと強調したところは、医薬やバイオに関連し得る部分です。日本からみると、かなり不特許事由が多いわけですが、ただ、クレームドラフティングの手法に工夫を加えることで解消できることも多くあります。このあたりは、優秀な代理人を日ごろから確保しておいて、膝を突き合わせた議論がどうしても必要になってきます。これはこれで、チャレンジんぐでやりがいのある仕事です。

なお、とりわけ世界的に有名なのは、インド最高裁で審理された、NOVARTIS AG v. UNION OF INDIA &OTHERS事件です。 本事案では、メシル酸イマチニブのβ型結晶についての特許性が争われました。1つの大きな争点として、上述の第3条(d)の適用が問題になりました(他にも、争点はございます。)。インド最高裁は、2013年4月1日の判決(約2か月前)において、上述の「効能(efficacy)」を治療上の効能「therapeutic efficacy」と限定的に解釈することにより、メシル酸イマチニブのβ型結晶は、物性的には増大された効能があることは示されているが、治療上の増大された効能があるとはいえない、として、拒絶しております。

このように、インドでは、通常の新規性・進歩性以外にも、インドの特殊性に起因して、特許戦略上、気を使わなければならない部分が多くあり、それを意識した「しこみ」も考えていかなければならない、といえます。








←現在のランキングは!?(2017年4月1日~試用中)
コメントフォーム

記事にコメントあればどうぞ(★のみ必須)※返信は確約できません

名前

メール *

メッセージ *

よく読まれた投稿(ベスト10)

・・・・・

条・項・号を英語でいうと・・・

いずれか早い(遅い) A or B, whichever comes first (later)

国内移行後のPCT段階での名義変更と名称変更(PCT/IB/306)

代理権・特別の授権・委任状の提出(代理権の証明)についての探求(特許法9条・特許法施行規則4条の3)

国内優先権主張出願と分割出願とで留意すべき新規性喪失の例外の手続きの違いは何か?

同一出願人による出願で注意すべき点(自己衝突、terminal disclaimer、self collision、double patenting)

国内優先権利用時の基礎出願の取下擬制に伴うリスクの回避方法

PCT国際段階における出願人の名義変更はどのように行うのか

国際調査機関による発明の名称の決定と国内移行

PCT国際段階における発明者追加・削除はどのように行うのか