審査基準上の分割出願の要件(特に、要件(2)-2)
現行審査基準によると、以下のように、分割する時期に応じて、分割の実体的要件が異なります。
■補正をすることができる期間内の分割■
要件(2)-2、要件3の二要件について判断する。
■補正をすることができる期間外の分割■
要件(2)-2、要件3に、要件(2)-3を加えた三要件について判断する。
この是非はとりあえず端折りまして、もっとも、注目されていないのが、要件(2)-2といえます。
要件(2)-2は、次のとおりです。
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要件(2)-2
原出願の分割直前の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明の全部を分割出願に係る発明としたものでないこと
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つまり、「分割出願に係る発明」をA発明とすると、A発明以外の「発明」が「原出願の分割直前の明細書、特許請求の範囲又は図面」に記載されていれば、本要件を満たすことになります。
ところで、改善多項制の中では、「発明」の単位の概念がなおさら希薄です。例えば、明細書のどこに記載されていても、特許要件の具備とは無関係に、ここが発明です、といえてしまいます。したがいまして、この要件は極めて形骸化しやすい要件です。むしろ、実際に形骸化しているものとして、実務が動いているとも理解できます。
また、面白いことに、この要件(2)-2は、親出願のクレームとの関係は要求しませんから(それは、分割の適法性が認められた後に、39条2項の問題として提起されます。)、分割時の親出願がクレームA、明細書がA+Bであって、分割出願が、同じく、クレームA、明細書がA+Bであっても、この要件(2)-2を満たすことになります。さらにいえば、上述のとおり、明細書にBが含まれていることの意義は改善多項制下では、形骸化しています。
したがいまして、ほとんど、実質的な意味において、この要件(2)-2は、現状の実務の下では、意義が小さいわけです。
なのになぜこのような要件を審査基準が検討せざるを得ないかというと、そもそも特許法44条が、大昔の法律のまま、姿を変えていないために、非常にファジーに、次のように記載されているだけだからです。
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特許法44条
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新た な特許出願とすることができる。
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そろそろ、分割の意義や39条の先後願との関係を見直す(立法的に、あるいは、実務的に)機会かもしれませんね。。。