Myriad事件、Bilski事件(machine or transformation test)、医薬・バイオ特許事例研究会
今日は、ワシントンにあるWHDAのライアン・チルノマスさんによるバイオ分野の米国特許法の進展について、研究会で御報告を頂いた。
朝からとても体がだるく、頭の働きが鈍くなってたので欠席しようかと思ったけど、主催者としては行かざるを得ず。。。私に代わって、小合先生が英語と日本語でファシリテーターを上手くこなしてくれたので、助かりました。
でも、行くと、話が面白かったからか、それなりに頭が働いた。。。でもその後、どっと疲れたので、食事会は辞退して、他の先生方にお任せしました。ありがとうございました。
2つの話を頂いた。
1つは、特許適格性の話。もう1つは、記載要件(written description)の話。
(1)特許適格性の話
主には、MyriadのCAFCの判決と、Bilski最高裁判決後のmachine or transformation testについて。
Myriadについては、やや割愛していうと、CAFCの判決は、
(A)Compositionのクレームについては、法定意見は、(イントロンが除去されている点で天然とは異なる)cDNAのみならず、long DNAやshort DNAなど、天然でもその配列が存在するものであっても特許適格性を認める、というものとなり、結局、司法省が提出したアミカスブリーフの理論は、CAFCによって「子供じみている」として一蹴されている。もっとも、3人のジャッジのうち、Bryson判事は、cDNAの特許適格性を認めるが、long DNAやshort DNAの特許適格性を認めないとの反対意見(Dissent)を書いている。
(B)スクリーニング方法のクレームについては、machine or transformation testによって、特許適格性を認めた。
(C)診断方法のクレームについては、machine or transformation testによって、特許適格性を否定した。
machine or transformation testは、Bilski事件では、CAFCは、特許適格性についての唯一の基準とされた。しかし、連邦最高裁は、machine-transformation testは、唯一の基準ではないとし、CAFCの立場を否定した。しかし、連邦最高裁は、かといって、新しい基準をうちたてることはしなかった(しかも、Bilskiの特許適格性を否定する点でCAFCと同じ結論になっている。)。
報告書の話にもあったが、結局、machine or transformation testの具体的な適用の状況は、Bilskiの最高裁判決の前後で顕著に変わったともいえないようである。また、何をもってtransformationalとし、何をもってtransformationがcentralであるかについても、まだまだ、machine or transformation testについては、今後の判例の積み重ねが またれるところであろう。例えば、determiningというステップも、mental step的なもの(お昼に何を食べるか決定する)から、より物理的なもの(ある化合物の溶媒中の濃度を決定する)まであってさまざまだ。なるべく、transformationalと主張しやすいステップを記載しておくことが望まれるだろう。
なお、Myriad事件は、CAFCのen bancにはいかないようである。今後、おそらく、連邦最高裁に戦いの場が移るだろう。司法省の立場、米国特許庁の立場、米国のバイオ産業の立場、医療機関の立場、患者団体の立場などの相克の中で、連邦最高裁がいかに判断するかが楽しみなところ。CAFCみたいな知的財産についての専門性の高いところとから、連邦最高裁みたいなそうではないところに、戦いの場が移れば、また、新たな視点から事案が吟味されるだろう。
Myriad以外にも、Prometheus v. Mayo事件とClassen v. Biogen事件についても取り扱った。これは、主に、machine or transformation testについての話。
(2)記載要件の話
Boston Scientific v. Johnson & Johnson事件、Centocor v. Abbott Labs事件、Goeddell v. Sugano事件について取り扱った。